悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記1

池を泳ぐカモ

初めての入院

2022年2月15日
入院の緊張からはやく起きてしまった。
まだ少し寝れるかも、と思い布団の中で粘ってみたが全然だめそうなので仕方がなく布団を出た。
忘れ物がないようここ三日間しっかり準備してきたが何分入院など始めてなものでついソワソワとしてしまう。
今はコロナの影響で面会もできない…もし忘れ物があっとして、それを家族に届けてもらうのも普段以上に面倒な手順を踏まなくてはならなくなるのでここで失敗はしたくなかった。

前日からアプリで予約していたタクシーが二十分ほど早く着いてくれた。大量の荷物を抱えて行き先を「北海道がんセンター」に指定した私を見て色々察するものがあったのだろうけど、特にあれこれ聞いてくるわけでもなく先日まで札幌近郷を騒がせていた大雪の話などをした。

運転手さんのネームプレートの「好きなもの」の欄にネコと書かれていたので、猫の話もした。
コンビニで猫グッズ…猫の巾着とか小銭入れとか、そういうのを見るとつい買ってしまうとのこと。
なんとも可愛らしい運転手さんだ。

病院に到着し、手付きをすませる。
入院の手続き書類を見るともっと手順が多いはずだったので色々と準備していたのだが、思っていたよりすんなり手続きは終わってしまった。

そして、手続きの後はこういったご時世なのでコロナの検査がある。
私、ゴロ斎藤は昔行ったインフルエンザの検査が痛くて痛くて、あの綿棒みたいのを鼻に詰めるのがトラウマになっていた部分がある。

今回もこの検査が嫌で仕方なかったのだが結局は検査する人によるものなのだろう、この時は全く痛くなくて拍子抜けした。

個室と聞いていたのだけれど

すぐに陰性の結果が出たのでこれから過ごす部屋に通される。
入院が決定した時主治医さんから「入院患者さん、ほとんど高齢の方だから君みたいに若い人は生活ペースが違って団体部屋だと大変だよ。朝四時くらいから世間話しはじめるから…だから個室部屋押さえてあげる」と言われていた。

個室部屋の料金1日6000円の出費は気になるが、なにしろ初めての入院。
最初は個室部屋を体験して、大丈夫そうなら次の入院は団体部屋にしようかな、とも思っていた。

しかし、この時通されたのは団体部屋だった。

居住スペース狭!
荷物を置いたらほどんど足のやり場がないし、鍵付きの貴重品入れは財布くらいしか入らない…。
持ってきたiPadMacbookはどうしよう…。

そして暑がりの僕に厳しいのは…これは入院患者さんのほどんどが高齢者だから仕方がないのだけれどこの部屋が滅茶苦茶暑いこと。
薄い入院着に着替えても汗をかくほど暑い。これでは夜寝られない。
(後日、室温が28度あるのに寒いからどうにかしてくれと訴えている患者さんをみたことがある)

ふと自分のエリアの冷蔵庫をみると隣の患者さんの介護パンツが置かれていた。
居住スペースが狭すぎるから空いていた隣に置かせてもらったのだろうが、これをみた瞬間団体部屋で過ごすのは無理だなと確信した。

すぐに看護師さんに「個室部屋だと聞いていたのですけど…」と問い合わせた。

やはりどうやら手違いで団体部屋に入院ということになっていたらしい。
幸い空いている個室部屋があったのですぐにそちらに移れたがこの時空いている部屋がなかったらどうなっていただろう…考えただけでもゾッとする。

病院食と骨髄穿刺

部屋に荷物などを置き、環境を整えるなどして過ごしているとお昼の病院食がやってきた。病院食…人から聞いた噂やインターネットの話でみると、あまり評判が良くないイメージがある。
曰く、おいしくない、味が薄いなどなど。
この日の昼食はご飯にシュウマイ、厚揚とふきの煮物、黄桃缶、白菜の漬物が出た。

で、味なのだがこれがうまい。味が薄いなんていうことは全くなく、自分としてはシュウマイ用についていると思われる醤油もなくてもいいかな?といったほどだった。
毎日このくらいのクオリティーの病院食がやってくるのなら非常に楽しみだ。

おいしいお昼ご飯が食べ終わり少しすると、15時にマルクという検査を行うことを告げられる。
マルクなんていう呼び方だとなんだかパンとコーヒーが楽しめそうな雰囲気だが、別名は骨髄穿刺。
腸骨に針をぶっ刺して骨髄液と骨髄組織の一部を採取する検査だ。

僕はこの検査をするのが憂鬱だった…まず切ったり刺したり系の手術や検査に、なぜだか知らないけど普通の人より強く恐怖感を持っている。
それに加えて昔軽いぎっくり腰をやったことをあるので、腰に針をぶっさすなどとは聞いただけでもヒッとなる内容だった。

マルクの検査は僕の病室で行うことになった。
なぜか?恥ずかしいことに僕の体が肥満体でデカすぎるから検査室のベットだと狭くてやりにくいらしい。

ベットだけではない、麻酔も太ってるからたくさんかけなければ効かないらしいし、そもそも検査に使う針が分厚い肉のせいで腰骨に届かないかも、ということらしい。

主治医の説明の中でなんども「太っているから」「ふとっているせいで」という単語が出てくる。これほど太っていることをストレートに連呼されることは今までない。

検査の内容的にも太っていることで損しかしてないようだし、ほんと痩せようと思った。

恐れていた検査の内容だが医学の進歩がすごいのか、医者の腕が良いのか、これがほとんど痛くなかった。
尻餅をついて三日後くらいの鈍い痛みを腰にほのかに感じるだけで、あとは僕が怖がりだから骨を取る時の感覚に勝手にビビってるだけ。
普通の人には全く問題ないだろう…うつ伏せになって寝てたら普通に終わるはずです。

マルクの恐怖が過ぎ去りボケーとしている僕にちょうど妻からLINEが入る。

今年のサマーソニックの出演者第一弾決まったけど、THE 1975、POST MALONE、KASABIANTHE LIBERTINES、MÅNESKIN、PRIMAL SCREAM、FISHBONE、KULA SHAKER辺りを見れたら見たいねー、みたいな話題。

窓の外ではカラスがオイオイと変な鳴き方をしながら飛んでいた。