悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記9
2022年3月3日
朝から主治医より嬉しいお知らせやってくる。来週後半には退院できるかも、ということだ。欲を言うと前半くらいに退院できたら…とは思うが、嬉しい嬉しい。飲む薬もだんだんと減ってきて、今サイクルの入院も終盤なんだなと身を持って思う。
この日はひな祭りということで晩ごはんに桜のロールケーキなんかがついてきた。豪華!雛人形の絵が書かれたポストカードもついてきて、なんだか嬉しくてちょっと感動してしまった。
減量を命じられているのに売店のセブンイレブンでミニナンを買って食べてしまう。ベビーチーズと合わせて食べるとちゃんとチーズナンの味がしてめっちゃうまいのだ。
2022年3月4日
朝から大部屋の方からワイワイと声が。聴いているとどうも入院患者の中に僕と同郷の方がいるらしい。気になって話しかけてみたいけど個室住民と大部屋住民の中にはどうも隔たりがあるような気がして話しかけにくい。
思えば入院当初は個室で一人っきりやりたい放題という環境にとても優越感を感じ、まるでアリゾナ州立刑務所におけるビスケット・オリバみたいだなと思ったりしてたけど、何週間も同じ部屋に籠もっていると流石に寂しくなってきた。最近では大部屋もいいかな、なんて思ってきている…。
この日もKANON PANCAKES さんのパンケーキがデザートで出てきた!
昨日のひな祭りを受けて、桜あんの乗っかったパンケーキ、今回もとても美味しかった!
2022年3月5日
この日は朝どうも調子が悪かった。倦怠感が強く、なんかやろうとしても30分くらいで横になって休憩しないとならないような1日だった。抗がん剤の副作用である白血球の低下が始まったのだろうか?夜に腹も下すし嫌な1日だった。
2022年3月6日
具合は悪いがscaniverseで自分の入院している個室を3Dスキャンするなどして遊ぶ。すぐにダウンする。白血球を増やす注射を打つ。白血球は骨髄で作られているからだろうか、こいつを打つと腰や膝が痛くなる。風邪で熱を出した時に関節痛になった経験は誰にでも有るだろうけど、あんな感じ。
今僕が入院のしている個室を3Dスキャンしてみた。2月15日からずっとここに篭っている。たかだか10万くらいのスマホにLiDARセンサーが搭載していてこんな事出来るんだからすごき時代よ。 pic.twitter.com/3O7nSGbsLj
— ゴロ斎藤@悪性リンパ腫で入院中ーどさんこライフ212ー (@dosankolife212) 2022年3月6日
悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記8
2022年2月28日
抗がん剤の点滴は数日前に取れたけど、採血があるからと言うことで一週間近く僕の胸のCVポートにぶっ刺さっていたビューバー針がこの日ついに取り外すことになった。
点滴が取れたことでかなり動きやすくはなっていたけど、ヒューバー針が刺さっていると服を脱ぎ着する時に引っかかりそうになって気になるのでこれで完全に自由に慣れた気がした。
採血は、白血球の数値を確認するために行う。早い人はこの辺ですでに白血球の値が低くなってくるので感染症などに気をつけて生活しなければならない。
すぐに採血の結果が出たが、僕の場合はこの白血球の低下というのはまだ起こっていないようだった。
夜、妻とLINEでビデオ通話をする。
ロシアのウクライナ侵攻について、不安で良く寝られなかったという。
病気だから仕方ないけど、こういう時一緒にいることが出来ないのがなんとももどかしい…。
2022年3月1日
朝から胸部レントゲンを撮る。抗がん剤の効果が出るには少し早いが、一応患部である胸の状態を見ておきたいとのこと。縦隔の腫瘍というのはCTで見ないとはっきりとは見えないらしいが、それは次のサイクルの入院時に行うとの説明を受ける。
そしてこの日、白血球の数値を上げる注射というのを打った。これにより腰とか背中が痛くなるかもしれませんと説明を受けたが、夕方くらいになって本当に痛くなってきて驚く。風邪で熱が出たときのような、関節痛のような痛みだった。
今回の入院において、実は自分的に暇を生かして勉強、インプット、アウトプット!がというスローガンを持っていた。ついサブスクで映画とか見てダラダラ過ごしてしまいそうなので、それではいけないということでこのようなスローガンを立てたのだけれどこの日はついに映画を見てしまった。まあ、たまにはいいよね…
ちなみに、見たい映画は「白竜3 ~非情のバトルロワイヤル~」です…
2022年3月2日
前日に引き続き腰が痛い。まあ痛み止めもらうほどじゃないのだけれど…
さて、抗がん剤投与中はどんどん味覚がおかしくなっていって戸惑ったけど、この時期くらいにだんだんと味覚が戻ってきて食べるもの食べるもの美味しく感じるようになった。まあ、それはいいことなんだけどこの味覚のカムバックが暇と組み合わさり、なんだか食べ物のことばかり考える様になってしまった。
僕の入院している病院は一階にパンを売っているカフェが有るのだけど、今回の入院で減量を命じられているし(体重が多いと使用しなければならない抗がん剤の量も増えるから)なにより癖になって毎日パンを間食するようになるとマズイなと思っていたからだ。
しかしこの日はどうしても抗うことが出来ず、禁忌を冒してしまった。
で、パンを買って自分の個室に戻るためエレベーターに乗るんだけど、こういう時に主治医と一緒になってしまって気まずい思いをするのであった…まあ、今サイクルのカフェ利用はこれで最後ってことで…。
悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記7
2月25日
抗がん剤投与前は病院食だと量が足りないなどと言ってサラダチキンや豆腐バーを足したりしていたが、すっかり一食なんとか完食できるというほどまで食欲が落ちてしまった。僕は元来白米が滅茶苦茶好きなのだけれども、その白米を完食するのが一番しんどかった。
それでもしっかり食べると体に元気が湧くのを実感する。今までも食に感謝していたつもりだけども、食べたものが原動力となって自分の体は動いてるんだなというのが身をもって体験できたのは良い経験だと思う。
エトポシド、ドキソルビシン、オンコビンの投与が始まってからというもの、毎日ダルいダルいと言っているけどこの日も御多分に洩れずダルい。それでも僕はプレドニンというステロイドを朝と昼に9錠も飲んでいて、そいつのおかげでだいぶ元気がブーストされているらしい。もしプレドニンを飲んでなかったらどのくらいダルくなるのだろうか…。
入院前に「SF核戦争後の未来・スレッズ」という映画をアマプラで見た。https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07V2PDVGB/ref=atv_dp_share_cu_r
できちゃった婚で一緒になった夫婦が新居探して、「壁がぼろいな、よーし自分達で塗っちまうか」なんつって、そういうささやかなだけど幸せな日常も核の爆風が全部ぶっ飛ばしちゃって放射能と飢餓と絶望しかない核戦争後という地獄に放り出されていくと言う映画。ドキュメンタリーのように淡々としてるのが逆にジメッとしてて後味イヤーな感じの作品だった。
テレビでは各局こぞって前日発生したロシアによるウクライナ信仰について取り上げているけど、この映画の事をつい思い浮かべてしまった。
2月26日
起床時間になり、廊下に出てみるとなんだか入院患者が三人ほど集まって窓の外を眺めている。何を見ているのか気になって僕も見てみたら、この日は良い天気でとても綺麗な朝焼けが眺めた。今日は6日間連続抗がん剤投与の最終日。それを祝してくれているみたいじゃないか。
札幌の綺麗な朝日。普段こんな時間に起きることなんてまず無いから、これが見れたのが入院してよかったことの一つかも。BGMはHüsker DüのNew Day Rishigでよろしく。 pic.twitter.com/5Ri2Rmu2w7
— ゴロ斎藤@どさんこライフ212 (@dosankolife212) 2022年2月25日
さて、朝ご飯である。数日点滴をしていて、味覚障害が出てきた気がする。大好きで入院してから暇さえあれば飲んでいたコーヒーが美味しくない。苦味しか感じないのである。ご飯のおかずも酸味の強いもの、塩気の強目のものは美味しく食べれるんだけど、甘辛系のものの味がなんだかぼやけているのような気がしてあまりおいしくない。
僕が入院している病院はがんに特化した病院なんだけど、そういった抗がん剤による味覚障害のためなのか、売店に大量のご飯のおかずや、調味料が売っている。
塩分が気になるので僕は絶対に手を出さないぞ、と初めは思っていたがこの日とうとう負けてしまった。
高菜、うま塩、マヨネーズ、練り梅(これが滅茶苦茶うまい!)など色々買ってしまった…。
太るのでこれは気をつけないと…
悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記6
2月22日
2月も後半だというのに窓の外は猛吹雪の日。
昨日投与したリツキシマブの影響か、それとも6時起床という早起き生活になれないからか、朝起きるととてもだるさを感じた。
前の日に脂っこいもの食べ過ぎちゃったな、っていうときの胸焼け感もちょっと感じる。
今日から4日間、24時間連続でエトポシド、ドキソルビシン、オンコビンの三種類の抗がん剤を打つ、R-EPOCH療法の本番スタートとも言える日だ。
リツキシマブより副作用なども多いのでドキドキである…。
投与前に採血があったのだけれども、これは前日にCVポートに指したビューバー針からの採血となる。
痛みのなくすぐに済んでしまうので、正直怖い思いしてCVポートを入れてよかったなと感じた。
点滴の袋がやってくる。
これがまたドキソルビシンのビジュアルがとても派手でおののく。
リボンナポリンみたいな色、といえば北海道民はすぐに理解してくれるだろう。
色だけではなく大きさも24時間分ということもあって巨大で、とにかく見た目からしてラスボスの風格というか、おっ、ついに来たなという雰囲気をまとってる。
動けるうちに動いておこうと思うが特にすることがない。
とりあえず先日壁に貼った、妻が過去に飼っていた猫3匹のうち、どの猫が可愛いか病室にやってきた主治医や看護師に聞いて人気投票を行うという暇つぶしを行う。
本当はすべての猫がかわいい…猫に順位をつけるようなことはしたくないけど暇だったし、許して。
この日、スーパー猫の日だったし、いいでしょ。
夕方妻から連絡が来る。
まだまだ寒い北海道だが、ストーブが壊れて動かなくなってしまったとのこと。
なんだってこんな時に…。
この日の吹雪で管理会社に全く電話はつながらないということだけれど、もしつながってもこの天気なら業者もすぐには来てくれないだろう。
仕方ないので妻には僕の部屋にあるテレワーク用に買った巨大な電気ストーブをリビングまで持ってきて、それで暖をとってもらう事にした。
そういえば、数年前に父が腎臓の不調でぶっ倒れて入院したときも実家の水道管が壊れ、母が苦労しながら役所や業者とやり取りしてどうにかしたらしい。
不思議なことだけど、親子揃って似たような騒動に巻き込まれたなと思うと同時に、非常時にそばにいられなかった無力さにうーんと唸ってしまった。
2月23日
とにかくだるい
2月24日
とにかくだるいし食欲もだいぶ落ちた
悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記4
病室のIot化を企む
2月20日
日曜日。
昨日から入院して初めての週末を病院で過ごしている。
抗がん剤治療の副作用として、白血球の低下と、それに伴う感染症のリスクがあるので普段売店に行くときはなるべく外来の患者さんが少ない時間帯で、と注意されている。
それが土日は外来がお休みなため、いつでも気兼ねなく病院内を歩き回ることができる。
普段患者さんでごった返している分、誰もいないのが妙に静けさを感じ、まるで映画の「28日後…」みたいだなと思った。
さて、特に検査などないので暇である。
入院していてもっとこの個室部屋が便利になればよいと思い色々考えていた。
一つ気になる問題があって、それはベットに横になると電気のスイッチに全く手が届かないことだった。
別に普段なら立ち上がってスイッチに手を伸ばすくらい面倒ではないのだけれど、今は入れたばかりのCTポートの箇所がまだ突っ張るような感覚があるし、明日から抗がん剤治療で数日間点滴で繋がれっぱなしになるってだけでも煩わしいのに、その上副作用が重く出たらちょっとどうなるかわからないな、と思った。
これは病室のIot化しかない。
今からamazonで注文しても受け取ることができないので、次のサイクルへの課題だけれども、SwitchBotなんかをを設置しておけば、もし僕が抗がん剤の副作用で全く動けなくなってベットで寝たきりの状態でもapple watchのsiriから電気のON・OFFができる。
不便な環境を改善するのを考えることは楽しいし、病気のことばかり考えても仕方がないのでこういうポジティブなことを考える時間を増やしていこうと思った。
夕方は父とLINEのビデオ通話をした。
コロナで面会は禁止だけど、60キロ離れた実家と一瞬で通話できていい時代だ。
当初の検査で僕の癌が相当深刻であるということになった時に(それは、幸運なことに間違いであったが)父はかなり狼狽えていたらしいけど、元気になったようで安心した。
心配かけてしまったので、親孝行しないとなと思う。
明日は初めての抗がん剤投与だ。
マルクやCTポートの設置手術ばかり気にしていたけど、さすがに投与前日となると「抗がん剤治療を行って、果たして自分の体はどのようになってしまうのだろう」という不安が生じてきた。
でも、ここまできたらやるっきゃない。
なんか、根拠はないけど大した問題なくうまく行く気がする。
結局、しっかり治療して元気になることが一番の親孝行だろうしね。
ああ、それにしても鶏肉以外の肉が食べたい。
病院食では、今のところ鶏肉しか出ていない。
豚肉、牛肉、羊肉が食べたい!
悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記3
中心静脈ポートの設置手術の日…
2月17日
旅行などで環境が変わると、妙に落ち着かなくなって数日寝れなくなることが多い。
今回の入院でもそれを覚悟していたのだけど、意外とこの日はたくさん寝れた。
なんだか息がしっかり吸えていない気がして少し苦しい。
悪性リンパ腫によって生じた腫瘍が胸にあるそうでそれが心臓などを圧迫して呼吸に違和感を生じさせている、という診断を受けていたがここまでの息苦しさを感じたことはなかった。
腫瘍が大きくなっているのだろうか?
もし健康診断で異常がスルーされていたらどうなっていたのだろうか?
色々な事を考えてしまう。
中心静脈ポートの設置は昼にするとのこと。
切ったり縫ったりなどの処置に人並み以上の恐怖心を抱く僕としては、待ってる間のこの時間が本当に落ち着かなかった。
痛かったらどうしよう…
失敗したらどうしよう…
そんなことばかり思い浮かぶので軽快でノリの良い曲でも聴いて気合いを入れようということで、Limp BizkitのBreak Stuffなんかを聞いて過ごした。
手術開始
僕の個室部屋がノックされると、看護師さんが入ってきた。
中心静脈ポートの設置準備ができましたので、来てくださいとの事。
とうとうこの時がやってきてしまった。
一瞬ここで「やっぱやめにしますか!キャンセルでよろしく!」と言ったらどうなるかな…と思ってしまったが実際にそんなことを言えるわけがなく、大人しく看護師さんの後を着いていった。
設置は1時間くらいで終わる簡単なものと聞いていたので、先日のマルクや入院前に検査で行った針生検のように処置室みたいなところで淡々と行うものだと思っていたのだけれでも通された部屋はよくドラマで見るようなガチの手術室だし、奥から中心静脈ポート設置チームみたいな数人が出てくるものだから思わずたじろぎそうになった。
(ポート設置に対して、この時の僕は手術という感覚がなかったのだけれどもポート設置は手術にカテゴライズされるものなのだそうだ)
指示に従い手術台に横になると「あぁ…俺もいよいよ手術をするのだ」という気持ちになってくる。
でかい青色の布で全身を覆うと、手術を行う箇所に赤い消毒液を塗っていく。
赤い色が血のようだと思った。
中心静脈ポート埋め込み場所は首、鎖骨下、腕、太ももと色々あるようだが僕の場合は首に入れるというのが事前の打ち合わせで決められていた。
首の埋め込み場所にターゲットの印をつけると、その周りに麻酔を打っていく。
ちゃんと麻酔が効いているのが確認されるとついに埋め込みの始まりだ。
ドラマや映画の影響なんだろうけど、首をちょっとでも切られるとブシュッと血が出るイメージがある(んなわけないんだろうけど)
首に何かやられるというのは結構怖い。
麻酔がしっかりかかっているので今回も全く痛くないのだけれども、今まさにメスで切ってるという感覚とか、そこから血が流れているというのがなんとなくわかるのが非常におぞましい感覚だった。
手術は、早く終われ早く終われと願ってるうちに何事もなく終わった。
初めての手術に動揺している私とは対照的に医者なんかは淡々と「はい、おつかれさまっしたー」ってな感じだし、手術室を出たら外来のお客様がいつも通り普通に行き交っている。
私だけがただただ疲れて憔悴していた。
ご褒美あり
自分の個室部屋に戻ると机にちょこんとスイーツが置かれていた。この日のお昼のおやつ、東札幌にあるKANON PANCAKESさんのパンケーキだった。これが滅茶苦茶にうまい…甘いクリームにちょっと塩気を感じる生地がとてもマッチしていて…
何だか、手術の終わったご褒美と成功をお祝いされてるような気がしてとても元気が出たし、涙が出そうなくらい嬉しい味だった。
鏡を見て手術後を確認すると、ガーゼの下に血が滲んでてまだ生々しい様子だった。
こんな状態でも明日目が覚めたらもうお風呂に入っても良いということ、現代の医療技術というのは改めて凄いなと思った。
寝るときは流石に手術後の患部が気になった。
身を捩ると少し痛いし、寝ている間に変な格好になって傷口が開いたりしたらどうしよう、なんて思っている間に眠りに落ちた。