悪性リンパ腫(原発性縦隔大細胞B細胞リンパ腫)による入院日記3

田舎の夏の線路

中心静脈ポートの設置手術の日…

2月17日
旅行などで環境が変わると、妙に落ち着かなくなって数日寝れなくなることが多い。
今回の入院でもそれを覚悟していたのだけど、意外とこの日はたくさん寝れた。

なんだか息がしっかり吸えていない気がして少し苦しい。
悪性リンパ腫によって生じた腫瘍が胸にあるそうでそれが心臓などを圧迫して呼吸に違和感を生じさせている、という診断を受けていたがここまでの息苦しさを感じたことはなかった。

腫瘍が大きくなっているのだろうか?
もし健康診断で異常がスルーされていたらどうなっていたのだろうか?
色々な事を考えてしまう。

中心静脈ポートの設置は昼にするとのこと。
切ったり縫ったりなどの処置に人並み以上の恐怖心を抱く僕としては、待ってる間のこの時間が本当に落ち着かなかった。
痛かったらどうしよう…
失敗したらどうしよう…

そんなことばかり思い浮かぶので軽快でノリの良い曲でも聴いて気合いを入れようということで、Limp BizkitのBreak Stuffなんかを聞いて過ごした。

手術開始

僕の個室部屋がノックされると、看護師さんが入ってきた。
中心静脈ポートの設置準備ができましたので、来てくださいとの事。

とうとうこの時がやってきてしまった。

一瞬ここで「やっぱやめにしますか!キャンセルでよろしく!」と言ったらどうなるかな…と思ってしまったが実際にそんなことを言えるわけがなく、大人しく看護師さんの後を着いていった。

設置は1時間くらいで終わる簡単なものと聞いていたので、先日のマルクや入院前に検査で行った針生検のように処置室みたいなところで淡々と行うものだと思っていたのだけれでも通された部屋はよくドラマで見るようなガチの手術室だし、奥から中心静脈ポート設置チームみたいな数人が出てくるものだから思わずたじろぎそうになった。
(ポート設置に対して、この時の僕は手術という感覚がなかったのだけれどもポート設置は手術にカテゴライズされるものなのだそうだ)

指示に従い手術台に横になると「あぁ…俺もいよいよ手術をするのだ」という気持ちになってくる。
でかい青色の布で全身を覆うと、手術を行う箇所に赤い消毒液を塗っていく。
赤い色が血のようだと思った。

中心静脈ポート埋め込み場所は首、鎖骨下、腕、太ももと色々あるようだが僕の場合は首に入れるというのが事前の打ち合わせで決められていた。
首の埋め込み場所にターゲットの印をつけると、その周りに麻酔を打っていく。
ちゃんと麻酔が効いているのが確認されるとついに埋め込みの始まりだ。

ドラマや映画の影響なんだろうけど、首をちょっとでも切られるとブシュッと血が出るイメージがある(んなわけないんだろうけど)
首に何かやられるというのは結構怖い。
麻酔がしっかりかかっているので今回も全く痛くないのだけれども、今まさにメスで切ってるという感覚とか、そこから血が流れているというのがなんとなくわかるのが非常におぞましい感覚だった。

手術は、早く終われ早く終われと願ってるうちに何事もなく終わった。
初めての手術に動揺している私とは対照的に医者なんかは淡々と「はい、おつかれさまっしたー」ってな感じだし、手術室を出たら外来のお客様がいつも通り普通に行き交っている。
私だけがただただ疲れて憔悴していた。

ご褒美あり

自分の個室部屋に戻ると机にちょこんとスイーツが置かれていた。この日のお昼のおやつ、東札幌にあるKANON PANCAKESさんのパンケーキだった。これが滅茶苦茶にうまい…甘いクリームにちょっと塩気を感じる生地がとてもマッチしていて…
何だか、手術の終わったご褒美と成功をお祝いされてるような気がしてとても元気が出たし、涙が出そうなくらい嬉しい味だった。

鏡を見て手術後を確認すると、ガーゼの下に血が滲んでてまだ生々しい様子だった。
こんな状態でも明日目が覚めたらもうお風呂に入っても良いということ、現代の医療技術というのは改めて凄いなと思った。

寝るときは流石に手術後の患部が気になった。
身を捩ると少し痛いし、寝ている間に変な格好になって傷口が開いたりしたらどうしよう、なんて思っている間に眠りに落ちた。